スマホを見る。
LINEは来ていない。
少し時間を置いてまたスマホを見る。
やっぱり来ていない。
「忙しいだけかもしれない」
そう思っているのに、
「何か変なこと言ったかな」
「嫌われた?」
「もう興味がないのかな」
そんなことまで考えてしまう。
別に、ずっとLINEをしていたいわけじゃない。
相手にも仕事があるし、自分にも生活がある。
大人なんだから返信できない時間があることくらい分かっている。
それなのに。
好きな人からのLINEだけは、
なぜか待ってしまう。
今回は、
「好きな人からLINEが来ないと、なぜこんなに不安になるのか」
その心理について考えてみたい。
■ 不安なのは「LINEが来ないから」だけではない
LINEが来ない。
ただ、それだけなら本来は単純な出来事だ。
仕事をしているのかもしれない。
寝ているのかもしれない。
友達と会っているのかもしれない。
スマホを見ていないだけかもしれない。
でも、好きな人が相手になると、
「返信がない」
という事実に、
「私に興味がなくなったのかもしれない」
という意味をつけてしまうことがある。
つまり、苦しいのは「返信がない時間」そのものではなく、その時間に自分の頭の中で作ってしまう物語なのかもしれない。
■ 好きだからこそ「安心したい」
心理学には「愛着」という考え方がある。
簡単に言えば、大切な人との関係の中で私たちがどのように安心を求めるかというものだ。
愛着に関する研究では、相手との関係が失われることへの不安が強い人ほど恋愛関係の中で安心や確認を求めやすい傾向が知られている。
実際、2022年に発表された、
恋愛関係にある302人の大学生を対象とした研究では、
愛着不安が高い人ほど、
「実際に受け取っているより、もっと頻繁にメッセージが欲しい」
と感じる傾向が確認された。
さらに、
自分は相手に早く返信するのに、相手からの返信にはそれ以上の時間がかかる、という傾向も報告されている。
もちろん、
「LINEを待ってしまう=愛着に問題がある」
という話ではない。
この研究も大学生を中心としたもので、すべての年代や恋愛にそのまま当てはまるわけではない。
ただ、好きな人からの連絡を待ってしまう背景には単なるスマホの習慣だけではなく、
「この人との関係は大丈夫だろうか」
という安心を求める気持ちが関係している可能性はある。
■ 返信が来ない時間、人は答えを探し始める
相手の気持ちは見えない。
だから人は考える。
「昨日までは普通だった」
「最後に送った文章が重かった?」
「既読になっているのに返信がない」
「SNSは更新しているのに……」
そして、答えが分からないからさらに考える。
こうして同じことを繰り返し考えてしまう状態は、
心理学では「反すう(rumination)」と呼ばれることがある。
恋愛関係についての研究でも、愛着の不安定さと反すうとの関連が報告されている。
考えれば答えが出そうな気がする。
でも、相手の本当の気持ちは相手にしか分からない。
だから考えても答えが出ない。
それでもまた考える。
恋愛が苦しくなる瞬間のひとつは、
この「答えの出ない問題を一人で解こうとしている時間」
なのかもしれない。
■ 「返信が遅い=脈なし」とは限らない
ここは大切なのではっきり分けて考えたい。
返信が遅いという事実だけでは、相手に恋愛感情があるのか、ないのかまでは判断できない。
LINEの使い方は人によってかなり違う。
連絡をコミュニケーションとして楽しむ人もいれば、LINEは単なる連絡手段だと考える人もいる。
仕事中はほとんどスマホを見ない人もいる。
文章を考えてから返信する人もいる。
そもそも頻繁な連絡が苦手な人もいる。
だから、
「3時間返信がない」
「半日返信がない」
という時間だけから、脈あり・脈なしを決めることはできない。
むしろ見るべきなのはひとつの返信速度ではなく、その人が普段どのように自分と関わっているかだと思う。
会おうとしてくれるのか。
話を覚えているのか。
こちらを気遣ってくれるのか。
約束を大切にしてくれるのか。
恋愛感情はLINEの返信速度だけに現れるものではない。
■ 大人になるほど、LINEだけでは測れない
学生の頃なら夜中まで何時間もメッセージを送り合うこともある。
でも大人になると、
仕事がある。
家事がある。
家族がいる。
一人になりたい時間だってある。
30代、40代、50代と年齢を重ねれば恋愛以外にも守らなければならない生活が増えていく。
だから、連絡の頻度と愛情の大きさが必ずしも同じとは限らなくなる。
これは少し寂しいことでもある。
でも逆に言えば大人の恋は、
「何通LINEをくれたか」
だけでは測れないということでもある。
大人になってから恋が少し難しく感じる理由については、
でも書いています。
■ それでもスマホを見てしまう夜
理屈では分かっている。
忙しいだけかもしれない。
返信が遅いだけで、
嫌われたわけではない。
それでもスマホの画面を何度も見てしまう夜がある。
それは、弱いからでも、依存しているからでもない。
少なくともそれだけでそう決めつける必要はないと思う。
好きな人との関係が自分にとって大切だから。
失いたくないものほど、人はその変化に敏感になる。
そして、相手の気持ちが見えない時間ほど不安は入り込む余地を持っている。
好きな人ほど素直になれず、
「寂しい」
「少し不安だった」
そんな一言さえ言えないこともある。
そんな心理については、
「好きな人ほど素直になれないのはなぜ?大人の恋愛に隠れた心理」
でも書いています。
■ 返信を待つ時間に、自分を見失わないために
好きな人からLINEが来たら嬉しい。
これは、きっと何歳になっても変わらない。
でも、相手から返信が来るまでの時間まで相手に預けなくてもいい。
LINEが来なくても自分の一日は続いている。
好きな音楽を聴いてもいい。
お風呂に入ってもいい。
眠ってしまってもいい。
友達と話してもいい。
そして返信が来たらそのとき嬉しくなればいい。
恋をすると相手の気持ちばかりを考えてしまう。
でも本当は恋をしている自分の心も同じくらい大切にしていい。
「まだかな」
そう思ってスマホを見てしまう夜もきっと恋の一部なのだと思う。
泡のように浮かんでは消える期待と不安。
その全部を含めて、誰かを好きになったということなのかもしれない。

