恋をすると綺麗になるのは本当?「見られること」が外見を変える心理学

恋愛心理

【「恋をすると女性は綺麗になる」って、本当?】

「最近、なんか綺麗になった?」

久しぶりに会った友人から、そう言われる。

髪型を大きく変えたわけでもない。

急に痩せたわけでもない。

それなのに、

好きな人ができた。

新しい恋人ができた。

人と会う機会が増えた。

そんな時期に、

「雰囲気が変わった」

「最近かっこよくなったね」

「なんか綺麗になったね」

と言われた経験がある人もいるのではないでしょうか。

昔から、

「恋をすると女性は綺麗になる」

と言われます。

でも、本当に恋愛そのものに人を美しくする力があるのでしょうか。

調べてみると、

「恋愛をすれば顔が美しくなる」

と単純に証明した研究があるわけではありません。

一方で、

人から見られること。

魅力的に見られたいと思うこと。

服装を褒められること。

身につけるものを変えること。

こうした出来事が、私たちの自己評価や身だしなみなどの行動と関係していることを示す研究はいくつかあります。

もしかすると、

恋が直接人を綺麗にするのではなく、

恋によって生まれる「誰かに見られる自分」が、

少しずつ行動を変えているのかもしれません。

【人は「誰かに会う」と思うだけで身だしなみを変えることがある】

2011年、Pamela C. Reganによる研究では、

女性参加者に、

魅力的な人、あるいは魅力的でない人と会う予定があると思ってもらい、

実際に使用する化粧の量が調べられました。

結果は興味深いものでした。

参加者は、

「魅力的な相手と会う」

と予想したとき、

相手が男性でも女性でも、より多く化粧をしていました。

つまり、

「魅力的な人から自分がどう見えるか」

という状況によって実際の身だしなみ行動が変化したのです。

これは、好きな人に会う前のことを考えると少し分かるような気がします。

いつもなら気にならない髪型を直す。

鏡を見る回数が増える。

服を何度も選び直す。

肌の状態が気になる。

香水をつける。

「このくらいでいいか」

と思っていた部分にもう少しだけ手をかける。

恋をした瞬間に顔の造形が変わるわけではありません。

でも、

「どう見られるだろう」

という意識によって外見を整える行動が変わることはあり得るのです。

【「見られている意識」は毎日の服装にも関係する】

2018年に発表されたNezlekらの研究では、

61人の働く成人が2週間にわたって毎日の服装を選んだ理由などを記録しました。

研究では、

「他人から自分がどう見られているか」を意識する傾向と、

服装を選ぶ際の自己呈示的な動機との間に関連が確認されています。

簡単に言えば、人からどう見えるかを意識する人ほど服装を通じて自分をどう見せるかという動機も強く現れていたということです。

ここで面白いのは、

「綺麗になるためには努力しなければならない」

と考えなくてもいいところです。

毎日、

誰にも会わない。

誰にも見られない。

特に予定もない。

そんな生活と、

仕事で人に会う。

友人と食事に行く。

デートをする。

好きな人と会う。

そんな生活では鏡の前に立ったときの意識が違うことがあります。

人は、

「綺麗になろう」

と強く決意したから変わるだけではなく、

環境によって自然に身だしなみを意識するようになる可能性もあるのです。

【褒められると、自分を少し魅力的だと思える】

では、

誰かから、

「今日かわいいね」

「その服似合ってる」

「最近かっこよくなったね」

と言われたらどうでしょう。

2013年に大学生48人を対象として行われた小規模研究では、

褒め言葉を受けた参加者は、受けなかった参加者より自分自身の魅力度を高く評価しました。

ただし、これは重要なところなので誤解しないようにしたいと思います。

この研究が示しているのは、

「褒められたら実際の顔が美しくなった」

ということではありません。

変わったのは、自分自身に対する魅力度の評価です。

それでも自分をどう感じるかは日常の行動と無関係ではないでしょう。

「この服、似合ってるんだ」

と思えばまた着たくなる。

「その髪型いいね」

と言われれば次も少し整えてみようと思う。

「最近綺麗になったね」

と言われれば昨日まで気にしていなかった自分の変化に気づくかもしれません。

【服を褒められた日は、自分についてより良く感じていた】

先ほど紹介したNezlekらの研究には、

もう一つ興味深い結果があります。

参加者は、その日の服装を他人から褒められた日や、自分自身がその日の服装に満足していた日に、自分についてより良く感じていました。

つまり、

「外見を整える」

↓

「誰かに褒められる」

↓

「自分自身について少し良く感じる」

という流れが生まれる可能性があります。

そして翌日、

「今日も少しちゃんとしようかな」

と思う。

さらに褒められる。

また自信がつく。

こうした小さな循環が続けば本人にとっては、

「いつの間にか綺麗になった」

という感覚になることもあるでしょう。

【高価なものを身につけると、人は魅力的に見える?】

では、

ブランドの服。

高価な時計。

ジュエリー。

こうしたものには意味があるのでしょうか。

ここは少し慎重に考える必要があります。

1987年の研究では、服装によって高い社会的ステータスを表現したモデルは、そうでない条件と比べて、身体的魅力やデート相手としての魅力などの評価が高くなりました。

つまり、

「身につけているものによって、他人から受ける魅力度評価が変わる」

という結果です。

ただし、

「高級ブランドを身につければ本人そのものが美しくなる」

「高価なジュエリーを買えば自然と美人になる」

という研究ではありません。

ここは分けて考える必要があります。

【高いジュエリーを買う本当の意味は、別のところにあるのかもしれない】

例えば、

ずっと欲しかった時計を買った。

初めて高価なジュエリーを身につけた。

少し背伸びして良いジャケットを買った。

すると、

その服に合う髪型にしたくなる。

靴も少し綺麗にする。

姿勢が気になる。

せっかくだから肌も整えようと思う。

こんな経験がある人もいるでしょう。

ただし、

「高価なものを身につけることで、その後の美容努力が増える」

という因果関係を直接証明した研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。

だから、

科学的事実として、

「高いものを身につければ綺麗になる」

とは言えません。

でも、

身につけるものが他者からの印象に影響することや、

人からどう見られるかという意識が服装選択に関係することは、

研究から確認されています。

【だから「恋をすると綺麗になる」のかもしれない】

ここまでをつなげて考えてみます。

好きな人ができる。

↓

その人からどう見られるかを意識する。

↓

服を選ぶ。

↓

髪を整える。

↓

化粧を少し丁寧にする。

↓

人から褒められる。

↓

自分自身について少し良く感じる。

↓

また身だしなみを整える。

もしこんな循環が生まれるなら、

「恋をしたから突然綺麗になった」

のではなく、

恋によって、綺麗になるための小さな行動が日常に増えた。

そう考えることもできます。

恋愛そのものが美容液なのではなく、恋愛によって「自分をどう見せたいか」が変わる。

その結果として周囲から、

「最近、綺麗になったね」

と言われるのかもしれません。

【これは女性だけの話ではない】

「恋をすると綺麗になる」

という言葉は女性について使われることが多いと思います。

でも、男性にも同じようなことは起こり得ます。

好きな女性ができた。

髪を切る頻度が変わる。

服を買う。

眉毛を整える。

香水をつける。

筋トレを始める。

少し痩せようと思う。

デートに着ていく服を考える。

つまり、

「誰かから魅力的に見られたい」

という気持ちは女性だけのものではありません。

実際、褒め言葉と自己評価を調べた2013年の小規模研究では、

褒め言葉による自己評価上の魅力度の上昇について男女間の有意な差は確認されませんでした。

【恋人から褒められることには、思っている以上の意味があるのかもしれない】

長く付き合っていると相手の外見を褒めなくなることがあります。

最初の頃は、

「今日かわいいね」

「その服似合ってる」

と言っていたのにいつの間にか言わなくなる。

でも、

相手が髪を切った。

新しい服を着ている。

いつもより少し化粧が違う。

そんな小さな変化に気づいたら、

言葉にしてみてもいいのではないでしょうか。

もちろん、褒めれば相手が美しくなる、

という単純な話ではありません。

ただ、褒められたことで、

「ちゃんと見てくれているんだ」

と思える。

その服をもう少し好きになる。

自分自身を少し肯定的に見られる。

そんな変化なら起こる可能性があります。

【自分を変えたいなら、「努力」より環境を変える方法もある】

もし、

「最近、身だしなみに気を使わなくなった」

「昔より老けた気がする」

と思っているなら、

いきなり、

毎日運動する。

食事制限する。

美容に何万円も使う。

と決めなくてもいいのかもしれません。

人に会う予定を作る。

少し良い服を着て出かける。

写真を撮ってもらう。

美容室に行く。

誰かと食事をする。

恋を探してみる。

つまり、

「綺麗になる努力をする」

のではなく、

「少し綺麗にして出かけたくなる環境を作る」

という考え方です。

人から見られる環境が身だしなみを意識するきっかけになる可能性はあります。

【マッチングアプリも「見られる環境」の一つ】

マッチングアプリを始めると、

プロフィール写真を選びます。

自分の顔を改めて見る。

自己紹介を書く。

人からどう見えるかを考える。

そして、

誰かとマッチングする。

メッセージをする。

会う約束をする。

デートの日が決まる。

すると、

「何を着ていこう」

「髪切ろうかな」

「少し痩せたいな」

と考えることもあるでしょう。

出会えるかどうかだけではなく自分自身をもう一度意識するきっかけになる。

そんな側面もあるのかもしれません。

→【マッチングアプリのプロフィール写真で印象は変わる?好印象を与える写真の選び方】

【恋をしていなくても、人は変われる】

ここまで読むと、

「じゃあ綺麗になるには恋人を作らないといけないの?」

と思うかもしれません。

もちろん、そんなことはありません。

重要なのは恋人の存在そのものではなく、

「自分がどう見られるかを意識する機会」

なのかもしれません。

仕事でもいい。

友人でもいい。

趣味の集まりでもいい。

お気に入りの店でもいい。

写真でもいい。

自分自身が、

「今日は少し素敵にしていこう」

と思える場所を持つ。

それだけでも毎日の小さな行動は変わる可能性があります。

【「綺麗になった」の正体は、一つではない】

外見は、

顔の造形だけで決まるものではありません。

髪。

肌。

服。

化粧。

姿勢。

表情。

そして、

自分自身をどう感じているか。

いろいろな要素が重なってその人の印象になります。

だから、

恋をした。

褒められた。

人に会うようになった。

少し良い服を着るようになった。

そのどれか一つが人を突然美しくするわけではありません。

でも、一つの変化が次の行動を生み、その行動がまた次の変化につながる。

そう考えると、

「恋をすると綺麗になる」

という昔からの言葉にも少し違った意味が見えてきます。

【まとめ|恋が人を綺麗にするのではなく、恋が「綺麗になろうとする日常」を作るのかもしれない】

今回確認した研究から、

「恋愛をすると人間の外見そのものが美しくなる」

とは言えません。

「高価なジュエリーを身につければ美しくなる」

とも言えません。

一方で、

魅力的な人との対面を予想すると化粧行動が変わった研究。

人からどう見られるかという意識と服装選択の動機との関連。

服装を褒められた日に自分についてより良く感じていた研究。

褒め言葉によって自己評価上の魅力度が高くなった小規模研究。

装いによって第三者からの魅力度評価が変化した研究。

こうした結果はあります。

だから、

「恋をすると綺麗になる」

という言葉を魔法のような話として考える必要はありません。

好きな人に会うから、

少し丁寧に髪を整える。

少し良い服を選ぶ。

相手から褒められる。

また自分を大切にしたくなる。

その積み重ねの先に誰かから言われる一言があるのかもしれません。

「なんか最近、綺麗になったね」

恋が直接人を変えるのではなく恋によって変わった毎日の小さな習慣がその人を少しずつ変えていく。

私は、そんなふうに考えています。

【参考にした研究】

・Regan, P. C. (2011)
“Cinderella revisited: Women’s appearance modification as a function of target audience sex and attractiveness.”
Social Behavior and Personality, 39(4), 563–576.

・Nezlek, J. B., Mochort, E., & Cypryańska, M. (2019)
“Self-presentational motives and public self-consciousness: Why do people dress a certain way?”
Journal of Personality, 87(3), 648–660.
オンライン初出:2018年7月14日

・Yatsenko, O. (2013)
“How Do I Look? The Impact of Compliments on Self-Perceived Attractiveness.”
Inquiries Journal, 5(09).

・Hill, E. M., Nocks, E. S., & Gardner, L. (1987)
“Physical attractiveness: Manipulation by physique and status displays.”
Ethology and Sociobiology, 8(2), 143–154.

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